成瀬課長はヒミツにしたい
「部長? どうされたんですか……?」

 突然入ってきた人影に、成瀬も若干の動揺の色を見せている。

 硬い表情で入ってきた人事部長の後ろから、姿を現したのは専務と常務だった。


「成瀬くん、貴重な面談の時間にすまんね。それと、システム部の水木くん……だったかな?」

 専務はだみ声でそう言うと、いやらしい目つきで真理子を眺めている。

 真理子は瞬時に嫌な予感がし、そっと成瀬に視線を送った。

 成瀬はチラッと真理子を見たが、すぐに専務に視線を戻す。


「何か御用でしょうか?」

 表情を変えない成瀬に、専務は「ふん」と鼻を鳴らすと、腕組みをしながらドカッと椅子に腰かけた。

「いやね、私だって成瀬くんのことは、買っている訳だよ。ただねぇ。こんなものが社内に出回ったんじゃ、適切な評価がなされているのか気になってね。人事部長と常務にも同席願って、詳しく話を聞こうと思ってね」

 専務はそう言うと、一枚の紙を机の上に出し、トントンと手で叩いた。
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