魔王の城

魔王の口付け

絵本が好き。

絵本は私たちが最初に触れる文学だから。

少しの文章と、大きな絵と手触りの良い紙。
めくれば次に何がやってくるのか分からないわくわく感に読むことを止められなかった。

特に好きなのは、シンデレラ!

意地悪なお母様とお姉様たちに囲まれて泣いていたシンデレラの元に、魔法使いが現れてシンデレラを夢の舞踏会に連れていってくれる。

そこで出会った王子様と深夜0時にお別れして、残していったガラスの靴を元に王子様がシンデレラを見つけ出す。


あ~~~考えただけでも胸が踊る。

そう、私はこんな物語が描きたい!

絵本作家になりたい!!!


…と意気込む私の名前は酒井 志帆 15歳。

3月に桜ヶ丘中学を卒業したぴかぴかの
正真正銘の高校1年生。

今日は4月7日。

天野神(あまのがみ)高校の入学式。

市立の桜ヶ丘中学の時と違って、天野神高校は私立で校舎の作りが凄い。

少し桜が散り始め、校舎の足元には桜の花びらが落ちている。

「桜の花びら…可愛い。」


スクールバッグの中から小さな手帳を取り出す。これは、私が絵本のネタ作りのためのコンパクト手帳。

思いついたことがあったら、即メモできるように常に仕込ませている。

花びらを1枚拾い上げ手帳に挟んだ。

なんとなく、今日抱いたこの思いを忘れないように!

その時、校舎前が騒がしくなった。

『きゃーーーーーー!!!』

女の子たちの黄色い甲高い声。

え、、なんだろう??
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