再会した幼馴染みは犬ではなく狼でした
 家に入ると、すでに電気は消えている。
 十時だった。
 足音を立てないようにして、自室へ上がり部屋に入る。

 疲れて、そのままベッドに倒れ込むと眠ってしまった。

 母の金切り声で目が覚めた。
 はっとして、時計を見るともう7時。
 びっくりして急いで下に降りると母にごめんと言ってシャワーを浴びる。
 とにかく、最大に急いで着替えるとパンを一口、コーヒーも一口飲んで行ってきますと玄関へ。

 後ろから付いてきた母は心配そうに聞いてきた。
 「顔色が悪いわよ。大丈夫なの?」
 確かに、ちょっと身体がだるい。
 「うん。疲れてるからかも知れない。今日は、何もないから早く帰って寝る。」
 「そうしなさい。週末もいなかったし、社会人なんだから自分でしっかり管理しなくちゃね。」
 そう言われて、うんうん頷いて出て行く。

 会社に着いてから、なんとなく身体が重くて辛くなった。
 昼ご飯も食べる気力がなく、心配した澄ちゃんがテイクアウトしたおにぎりやパンをミルクと一緒に持ってきてくれた。

 少し口にすると、頭がクラクラして突っ伏してしまう。
 「……花崎さん、花崎さん。」肩を叩かれて、顔を上げる。
 宝田さんがこちらを覗いて心配そうに見ている。
 おでこに冷たい手が当たる。
 「……やっぱり。熱あるよ。もう帰っていいよ。一人で帰れる?」

 後の仕事をお願いして早退することにする。
 一応、家に連絡しようと携帯を見ると、亮ちゃんからメール。
 辛すぎて見てられず、ごめん気持ち悪いから帰るとだけ書いて返信する。

 すると、フロアに亮ちゃんが現れた。
 課長がびっくりして出てきたが、亮ちゃんは真っ直ぐに私に向かってくる。

 
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