彼女はアンフレンドリーを演じている




「今週金曜の夜、大学のサークル仲間と飲み会があって」
「却下」
「おい待て、最後まで聞けって」



 人目を気にする美琴は、長引くようなら場所と時間を変えたかった。
 しかし遼は少し焦っているようで、今すぐ話しておきたい様子。



「幹事が調子乗ってカップル割適用で予約したんだよ」
「……却下」
「誰でもいいから女の子連れてこなきゃいけない飲み会になっちゃって」
「却下に決まってる」



 話の全貌が見えてきても断ってくる美琴へ、ついに遼が両手を合わせて懇願し始めた。



「お願い! 一日だけ俺に付き合って!」
「それ単なる合コンだしそんなの参加するほど遼くんとプライベートで仲良くない、他当たって」
「ひでぇ、俺は美琴のこと、共に新人研修期間を乗り越えたソウルメイトだと思ってんのに……」
「く……」



 新卒入社して同部署に配属され、社会人として初めて過ごす貴重な日々を共に戦い抜いた美琴と遼。

 その部署にはあの長屋もいたので、あまり思い出したくない記憶も多いが。

 遼との何気ない会話や一緒に取り組んだ仕事のことは、今でも良い思い出として残っている。



「仮に、私がその合コンに付き合うとして、見返りは?」
「ちゃっかりしてんな」
「得もないのに行くわけない」



 確かにその通りだなと納得した遼は、美琴が望みそうな見返りについて考えることにした。



「わかった、前日までに考えておくから、とりあえずお前も何か欲しい物考えといて」
「え!?」



 そう言って席を立った遼は、返事も聞かないまま社員食堂を出て行ってしまう。


 取り残された美琴は、やっとうるさいのがいなくなった安堵感と、見返りによっては行かざるを得なくなる不安に駆られた。


 そしてなにより、見返りが何かわかるまで、金曜日の夜を空けておかなくてはならないという煩わしさに、再び頭を抱える。



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