彼女はアンフレンドリーを演じている



 土日が明けて、再び無愛想でいられる気楽な五日間が始まった。


 満員電車に揺られ時間に余裕を持って出勤し、自席のパソコンを立ち上げる。

 後から続々とやってくる社員たちに、社会人として当たり前の挨拶だけはしっかりと交わす。

 業務についての会話は、一言二言で簡潔に済ませる。

 ミスをすれば余計な交流を生むので、なるべく迅速かつ丁寧に仕事を片付けていくのが、美琴の仕事スタイルだった。




「え、月曜のランチに女がカレー?」
「……遼くん、それ個人の自由だから」



 昼休み、社員食堂でカレーを食べていた美琴が、遼に見つかり絡まれている。

 窓際のカウンター席で一人静かに食べていたのに、何の了解も得ずに隣に腰掛けた遼は、頬杖をついて美琴を眺めてきた。



「な、なに……?」
「いや、例の男に抱いてもらったか?」
「ぶっ!!」



 真っ昼間の社員食堂で、一体なんてことを言い出すのかと怒りが込み上げる美琴は、思わずカレーを吹き出しそうになった。

 幸い近くに他の社員はおらず、遼の問題発言が誰かに聞かれたという心配はしなくて済みそうだったが。



「っ……ヴァカなの!?」
「あーその感じはダメだったんだな」
「違うから!」
「え、じゃあ抱い」
「そういう事じゃなくて……!」



 小声で会話しながらも、内容はとんでもなく低レベルなもので、美琴は頭を抱える。

 先週、蒼太から送られてきた飲みの誘いメッセージ。
 あれはやはり、遼に見られるべきではなかったのだ、と後悔した。



「もうその話やめて、あと隣に座るのも」
「違うんだって、男がいないなら美琴に頼みがあって」
「……は?」



 男がいないから出来る頼み事って、多分ロクなものじゃないと予感する美琴が、あからさまに嫌な顔をする。

 その拒絶の反応は遼にとっても予測の範囲内なので、なるべく下手に話を始めた。



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