この恋がきみをなぞるまで。


この距離なら、城坂くんを見ていられる。


こんな風にまじまじと城坂くんを見つめたのは、いつぶりだろう。

いつも、城坂くんと対面するときは彼の足元に視線を落としていたから。


昔はあまり差がなく、一時期はわたしが追い抜かしたこともある背丈は、今はもう届かないほど高く伸びた。

幼い頃の面影を残しながらも、眉目秀麗という言葉が似合うような、目鼻立ちのはっきりとした男の子になっている。


城坂くんが女の子に人気のある理由がわかる気がした。


たとえば、わたしと城坂くんが過去に何の因縁も関係もないふたりだったのなら、想うことが許されたのだろうか。

ただの幼馴染みを越えて、わたしは城坂くんの過去に根付いてる。

決して良い意味ではないそれに思いを馳せていると、涼花に肩を叩かれた。


「ねえ、芭流!⠀城坂、こっちに来てるよ」

「え……」


さっきまでいたはずの場所に城坂くんはいなくて、気付けば土手を上って距離を詰めようとしていた。

息を止めて、後ずさることもできないわたしを庇うように、涼花が城坂くんの前に立つ。


「どけ、柚木」

「嫌よ。言いたいことがあるならここで言って」


明らかに怒気を含んだ城坂くんに負けじと、涼花も声を低くする。

背中に隠れているだけではいけないとわかっているのに、その肩越しにも城坂くんを見るのがこわい。

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