俺、チョコはいらない。
「ああ……もしかして、他の女子に俺が言ってたのを聞いちゃったとか?」
私は、正直に頷く。
いつの間にか降り続いていた雨がやみ、雲の隙間からは青空が見えていた。
「まぁ、確かに他の女子にはああ言ったけど。あれは、舞衣以外のチョコはいらない、食べないっていう意味だから」
え!?
「だって俺が欲しかったのは、舞衣のチョコだけだから」
橙也が、真っ直ぐ私を見つめてくる。
「私のチョコだけ……?」
「うん。今年は、好きな人のチョコだけが欲しかったんだ」
“ 好きな人”
そんなふうに言ってもらえて、嬉しい。
「なぁ、これ食っていい?」
「いいよ」
橙也がラッピングを解き、ケーキを手に取る。
「んー、美味い。このケーキ、甘さ控えめなんだな」
「もっと甘いほうが良かった?」
「ううん。次は、こっちをもらうからいい」