俺、チョコはいらない。
翌日。
2月14日のバレンタインデーを迎えた。
朝。晴れているとはいえ、冷たい風に身体を震わせて私が家から高校へと向かって歩いていると、前方によく見知った後ろ姿を見かけた。
あの長身で黒髪くせっ毛の後ろ姿は、橙也だ。
「橙也っ!」
私が橙也の名前を呼ぶと、こちらを振り返ってくれた。
ただそれだけで嬉しくって、私は駆け出す。
「橙也、おはよう」
「はよ、舞衣」
橙也がじっと私のことを見てくる。
「どうしたの?」
「……ちょっと、じっとしてて?」
彼の長い手が、私の顔のほうへすっと伸びてきた。
な、なに!?
突然のことにドキッとして、私は思わず目を閉じる。