郡くんと甘いビターチョコレート
うじうじしながらも動けなかったのは、どこか自信があったからなんだと思う。
自信がないなんて思ってはいたけど、心のどこかで安心している自分もいた。
彼女はいないし、毎日登下校も一緒なんて、私、知らない間に浮かれてたんだ。
私みたいな何の面白みもない人、太陽みたいな郡くんに好かれる要素ないのに。
友達すらできない私のこと好きになってもらえるとかありえないのに。
優しいから一緒にいてくれただけ。
友達のいない私を見かねて声をかけてくれただけ。
たまたま痴漢から救ってくれただけ。
勝手に、私が郡くんをヒーローだって思っていただけで、彼の物語の中のヒロインが私なはずは、なかった。