郡くんと甘いビターチョコレート
……ずるい、私はずるい。
私は何もしていないのに勇気を出したあの子と郡くんの話を盗み聞きしたりして、その上彼の優しさに気づかないふりして隣の権利を手放そうとしなかった。
わかってるのに、全部。
友達以上恋人未満、じゃない。
私の世界が変わったあの日、偶然居合わせた彼に私が勝手に恋に落ちて、優しさに甘えているだけ。
ただそれだけの関係だって、気づかないふりをしていただけ。
気づきたくなかったし気づこうとしなかったけど、気づかなきゃいけなかった。
「……あーあ」
ひとりで帰るなんていつぶりだろう。
呟いて、返事がないのはいつぶりだろう。
当たり前に郡くんが隣にいて、そんな非日常のような日常に甘えてた。
友達以上恋人未満だって思っていた関係は、クラスメイトに元通りになっただけ。
そう言い聞かせるけど、溜めてしまった涙はもう止まってくれなかった。