郡くんと甘いビターチョコレート
郡くん。郡 真白くん。
クラスで、いや学年で、学校で、誰よりモテる正真正銘の人気者。
……であり、私のたった1人のヒーローだ。
常に誰かが近くにいて輪の中心にいる太陽みたいな君が、氷だとか一匹狼だとか怖いだとか、そんなふうに言われる私と2人でいるなんて、普通に考えたらありえない話。
私が彼をひとりじめしている時間があること自体、奇跡みたいで。
この時間も、それ以外の時間も、常に私は彼のことを考えてしまうし、ずっとドキドキして、浮ついてるんだ。
「怜南がこんなに可愛いってみんな知らないの、もったいないなあ」
「……郡くんだけに可愛いって思われたらそれでいい」
「ま、俺だってそう易々と怜南のこと見せたくないけど」
目が合って、細められて、ガタンと椅子が揺れる音と共に顔が近付いてくる。
反射的にぎゅっと目を瞑る。……そんなこと、あるわけないってわかってるのに。わかってるのに、いつも少し、期待しちゃう。