開けずの手紙ー完全版ー/長編呪い系ホラー【完結】
その2


”とにかくよかった…。三浦さんが見た夢は、まだ呼び寄せ夢じゃなかった…。それだけでもホッとしたわ。彼女は必ず救う。その気持ちは私も和田さんの一緒よ”

その夜、奈々子が自宅の寝床に入ったのは、夜12時半過ぎだったが、疲れているにもかかわらず、なかなか寝付けなかった。
ハードかつ彼女に取っては言わば異体験とも言えた、長い半日がフラッシュバックして、頭の中が妙に冴えていたのだ。

”お父さん…、今日、私は水野さんに会って来たよ。鬼島則人のお母さんにも…”

こう胸の中でつぶやくと、奈緒子の閉じた両の瞼からは涙が湧き出すのだった…。


***


翌朝、学校に着いた奈緒子は、さっそく職員室で手嶋と話し込んでいた。

「じゃあ、三浦さん、先生が帰る時は元気を取り戻していたんですね?」

「ええ。国上さんと直接話ができて、昨日の夢がまだ最終のじゃあないってわかったら、彼女、安心したようで…。まあ、僕もですが」

そう言うと、手嶋は満面の”苦笑い”を漏らした。

”そうよ、この手嶋先生も和田さんや私と気持ちは一緒。前任校の女子生徒を何が何でも守りたい…。ううん、守らねばという純粋な思いで彼女自身に接してるのよ”

奈緒子は正面の苦笑いの主を目を細めて見つめていた。
包み込むように…。


***


「えー?そんな…!では、三浦さん…、友達から”手紙拒否”のメールを…」

「そうらしいんです。彼女は親友一人にしか話してなくて、その子も一切口外していないと言ってるようなんです。どうやら先週自殺した戸田アキホの友人が、彼女は手紙のせいで死んだと推測してたんでしょう。それで…、戸田が死ぬ前に呪いを伝染させる手紙を送りつけた相手は三浦だろうって、そんなところから噂が流れたのかもしれません」

「まあ…!」

思わず奈緒美はどっとタメ息をついてしまった。




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