隠れ御曹司の愛に絡めとられて
「きっとこっちも美味しいよ?」
うん、多分そうだと思う。
分かってるけど、あ~ん、なんて恥ずかしすぎて、ちょっと抵抗が……。
「ほら、早くしないと、落ちちゃう。ほらほらっ」
尚も迫ってくる美味しそうなケーキに――いや、自分の食い意地に負け、私は出来る限り心を無にしながら彼の差し出すケーキにパクリと食いついた。
さっきとは違う味わいのしあわせな甘さに、思わずため息が漏れそうになる。
「ふふっ、美味しい?」
「……うん」
「良かった」
本当に嬉しそうに笑うから、あ~ん、なんて高校生カップルがしそうな恥ずかしい行為も、なんだか許せてしまう自分がいる。
おかしい、明らかに彼のペースに嵌まってる。
そのあとも「もうひとくち食べる? ほら、あ~ん?」って言いながら私の前にケーキを何度も差し出してきて……。
結局両方ともほとんど私が食べてしまったのだった……。
「ごちそうさまでした、とっても美味しかったです……」
「ふふ、亜矢さんに喜んでもらえて良かったです」
そう言って、やっぱりにこにこ笑顔のメープルくん。
この子は本当に穏やかな人だなぁ。
そう言う意味では、一緒にいても疲れない。
ただしときどき急に距離を詰めてくるから、それだけは要注意だけど。