魔王様と秘密のバレンタイン。


「魔王様、チョコ、貰ってくださーい!」
 2月14日、バレンタインの今日、クラスの女子達は“魔王様” にチョコを渡していた。

 “魔王様”というのはあだ名で本名は佐多(さた)くん。

 佐多(さた)が魔王サタンに近いのと、
 見た目がクールで魔王っぽいオーラを出したイケメンなことからそう呼ばれるようになった。

 そんな彼をわたし、姫石涙花(ひめいしなみか)は窓際に立ちながら心陽(こはる)と一緒に呆れながら見ている。

 心陽(こはる)とは高2で友達になって、今では仲良し。

「魔王様、今年も凄いねー。涙花(なみか)も渡すの?」

「いや、一度も話した事ないし。テニス部の部長の工藤(くどう)せんぱいに渡す予定」
 心陽(こはる)にそう答えたものの、不安で仕方ない。

「うっわ、今年もバレンタインチョコ渡すんかよ」
 急にウザくてチャラい山田が会話に入ってきた。


「“振られ姫”なんだからさ、もう諦めたら?」

< 2 / 10 >

この作品をシェア

pagetop