婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました

「皆さん、ありえないお話はやめましょう。神の前ですよ」


 パンパンと手を叩き噂話をやめさせる神父。日曜礼拝だった。

「王太子殿下の婚約者のセリーナ様はとても慈悲深いお方で、この子達の教育にも携わってくださる尊いお方です。そんな噂話はよろしくありません。セリーナ様をご覧になればすぐわかります」


「そうだそうだ! あの方は私みたいな者にも優しく接してくださった。未来の王妃はセリーナ様じゃないと」


 パン屋のサムの両親だ。


「セリーナお姉ちゃんは優しいんだぞ」

「セリーナ姉ちゃんを悪く言うな!」


 教会で勉強を習っている子供たちだ。


「わ、分かったよ。しかし、そんな雲の上の存在の様な方が平民に寄り添えるものなのか?」


「あの方はちゃんと見てくださる方です。わざわざ市民の生活を見に来られ、子供たちに教育の場を設けてくださった。皆さんが喜んでいたバザーのクッキーもセリーナ様が用意してくださったんですよ」


「でもよぉ、平民が王太子と結婚となったらそれはそれで王太子の人気が上がるだろう? この国の殆どが平民なんだから」


「一時的なものでしょう。未来の王妃が作法もままならない様では外交に支障をきたす可能性があります」


「あのジュリアナさんは無作法ってことか? あの子は賢いから学べばいいだろう。すぐ覚えるよ」


「そりゃそうだ! 貴族様とは違うってことをジュリアナさんが見せてくれるよ」


「フロス商会はそのご貴族様の屋敷に卸さなきゃ良いんだよ! そしたらあいつら食いっぱぐれるだろうよ」


「違いねぇ」


 はっはっはっ!! と好き勝手言って笑い合う者たち。



「セリーナ様をよく知らないのによくそんな事が言えたもんですね……。王太子殿下は婚約者のセリーナ様を蔑ろにしてまで、ジュリアナさんと婚約を結ぶとは思えません。それに王太子殿下は私たちの事をきちんと考えてくださっています。事実ではない噂を広めるのは良くありません。不敬罪で捕まりますよ!」



「……神父さんの言う通りだ。ジュリアナさんが王太子殿下に選ばれたのならその時は、街全体で祝ってやろうじゃないか!」



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