私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
「ん?王子?」

「これで、払えよ。
悪いけど、俺は帰る。
咲恵、ありがとな」
そう言って、手を振り踵を返したのだった。

「え!?王子!」
「………ったく…相変わらずだよな…」

「蒼くん…」
咲恵は、去っていく蒼志の後ろ姿をジッと見つめていた。



「━━━━蒼くんって、星那ちゃんと婚約したって噂があるんだけど、ほんと?」
それから、大騎、智久、咲恵は三人で飲んでいた。

「「ほんと」」

「そう…なんだ…」

「え?咲恵、より戻す気だった?」
「━━━━!!!?」
大騎の言葉に、咲恵は弾けたように大騎を見る。

「つか、咲恵」
「え?」

「あれって、付き合ってたって言えんの?」

「……それは…」
智久の言葉に、今度は落ち込んだように項垂れた。

「確かに!
ほとんど、デートってのしてねぇんじゃねぇの?」

「うん…そうだね…」

「だって実質、二週間位だったろ?
付き合ったっつうか…“そうゆう関係”だったの」

「うん。
基本的に、身体の関係だけだったかも?
もちろん一応彼女だったから、蒼くんや大騎達のグループに入れさせてもらってたけど……」

「そんな女が他にもいたもんなぁ、王子」

「そうだね…」

「あくまでも“姫様の代わり”だったもんなぁ、咲恵達のこと」

「でもまさか、婚約するなんて……」

「ん?」
「咲恵?」

「あり得ないと思ってた」

「そう?」
「王子の姫様への愛情、ヤバかったじゃん!
付き合う前から」

「蒼くんじゃなくて!
星那ちゃんの方だよ」

「え?」
「姫様が?」

「星那ちゃんは、執事さんのことが好きなんだと思ってたから。
高三の時に付き合いだしたことも、不思議だった。
しかも、星那ちゃんから告白したでしょ?」

「そうだな」
「姫様も、ずっと好きだったらしいぞ?」


「………やっぱ、草壁財閥だからかな?」

「「は?」」

「結局、お姫様も……御曹司の奥様になりたかったってことよね……
“普通の男”じゃ、物足りないってことよね」

「━━━━それはねぇよ!!」
咲恵の言葉に、大騎が声を荒らげた。

「え?」


「咲恵、それ!王子の前で、何があっても言うなよ………!」

智久の言葉が、咲恵に突き刺さるように響いていた。
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