私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
「ちょっ…河冨!?」

「河冨!!お前、どうした!?」
「そうよ!貴方らしくないわ!」
星那や両親が、心底驚愕している。

完璧な、河冨。
普段、こんな失敗をすることがない。



「━━━━本当に、申し訳ありませんでした!」
星那の部屋で、深く頭を下げ何度も謝罪する河冨。

「もう大丈夫だって!
でも、どうしたの?
もしかして、体調悪いとか!?」

「いえ!そんなことは、ありません!
ちょっと…動揺して……」

「え?河冨が、動揺なんて初めてだね……!」

「そうですか?」

「うん。いつも冷静で、余裕があるように見えるから。
まぁ…私が頼ってばっかだから、しかたないんだろうけど…(笑)」
フフ…と笑って、河冨を見る。

「いえ!むしろ、頼っていただけてることは、僕にとって幸せなことですので問題ありませんよ?」
ゆっくり、星那の足元に跪いた河冨。
星那を見上げて、微笑んだ。

「フフ…そんなこと言ったら、ずっと頼っちゃうよ?」
クスクス笑う、星那。

「はい。頼ってください。
ずっと……俺を……俺だけを………
…………貴女のためなら…俺は、何でもする……!」
星那の手を掴み、ギュッと握りしめた。

「え……河…冨?」

自身のことを“俺”なんて、言ったことのない河冨。
星那は、思わずフリーズする。

「え……あ、いや、す、すみません!!
………あれ…なんか…今日の僕はおかしいみたいです……」

そう言って、クシャッと自身の前髪をかきあげ握りしめた河冨。
苦しそうに頭を横に振り、星那を見据えた。

「申し訳ありません、お嬢様。
今日は、失礼させていただきますね」

頭を下げ、星那の部屋を後にした。


「…………なんか…プロポーズ、みたいだな…////」
ポツリと独り言を呟いた、星那だった。



そして━━━━週末。

泊まりの準備をしている星那。
そこに、河冨が部屋に来る。

「お嬢様」
「ん?」

「何かありましたら、いつでも連絡くださいね。
僕は、いつでもお迎えに参りますので!」
「うん」

「………」
「……ん?河冨、どうしたの?」

「い、いえ…
では、お気をつけて行ってらっしゃいませ……!」
いつものように、丁寧に頭を下げた河冨だった。
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