不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
恐る恐る振り返ると、そこには一宮くんを筆頭に、背の高いバスケ部員の彼らがズラリと勢ぞろいしていた。
私も女子の中では背は高いほうだけれど、バスケで全国のトップに君臨する彼らに勝るはずもなく、その圧力に卒倒してしまいそうになる。
「で、あのあと体操服は買えたの?」
「あ、はい!おかげさまで無事に購入できました。その節はありがとうございました」
「そっか、ならよかった。稀に見る不運だったもんね」
「そ、そうですね」
実はよくあることなんです、とは言わない代わりにもう一度ペコリと頭を下げた。
「うわ!律くんじゃん!」
「ってかバスケ部のメンバー勢ぞろいじゃん!」
彼らがこの体育館へ来た途端、クラスの声援にプラスして一気に甲高い声が響き渡る。
「(やっぱりバスケ部の人気はすごいな)」
そういえば、以前真実ちゃんが『練習試合のたびに体育館が応援しに来る女子で満員になるから大変なんだよね』、と口を尖らせながら言っていたことを思い出した。
「え、なになに!?律たち何しに来たの!?」
「我がC組の女子達の健闘を称えに来た」
「えー!ズルい!ウチらのこともちょっとは観に行ってよね!」
「てか律たち試合は?」
「俺らシード組みだからまだなの。今順番待ち」