不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
08:10年越しの願いごと




* * * *


律くんから預かった背番号《7》のジャージは、もはや1種のお守りのようになっている。


汚すわけにはいかないから、丁寧にハンガーに吊るして律くんの代わりを務めてももらっていた。




けれど、今日でそれも終わり。


律くんは今日のお昼ごろ、帰国する予定だと予め聞いていた。



今日は土曜日で特にこれといった用事はないけれど、パッと目を覚ますとまだ朝の6時になったばかり。


お昼までの道のりが長いからもう一度眠ろうと目をつむってみるけれど、やっぱりそれはできなくて、仕方なく私は身体を起こして身支度を整えたあと、ひたすら課題を終わらすことに徹した。




部屋の壁に掛けてある時計の針が、なかなか動かないことにじれったく思う。


こんなにも時間が早く経ってほしいと願ったのは初めてなくらい、今日のこの日を待ちわびていた。




事故や怪我なく、無事に着いているといいけれど。






「……いやいや、ダメだ!今は課題に集中!」


時計ばかりを気にして5分と集中力が続かない私は、前髪をキュッとゴムで括って顏を水で洗いなおしたあと、気合を入れて机に向かう。



これらが済むころにはきっと私、律くんに――……。




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