不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
また迷惑をかけてしまった罪悪感と、律くんの服が汚れてしまうと懸念する思いと、優しく顔に触れるたびに香ってくる柔らかい彼のにおいが、脳内に混乱を招く。
律くんが私を覆うように立っているから、彼の影にピッタリと嵌った私は日差しを浴びない。
「あ、あの……っ!」
「服のことなら気にしないでね?もう癖でさ、普段からワイシャツの下に部活の練習着を着てるんだよね」
「で、でも」
「大丈夫大丈夫、このワイシャツも伊都ちゃんの役に立てたと思えば本望だよ」
「……」
ふっと吹く風に、律くんの言葉と共に温かさが乗っている。
だけどこれ以上赤く顔を染めたくなかったから、私はソレを夏の匂いだと思い込んで、口をつむった。
そして、これ以上彼に迷惑はかけられない。
「あ、あの!律くん!」
「んわっ、いきなりどしたの伊都ちゃん」
ここでモジモジしていたって変わらない。
もうこれ以上、律くんを私の不運に巻き込んだらダメだ。