気づけば、吸血王子の腕の中【上】

枯れたと思っていた、いや、捨てたはずだった、この透明な雫。



...............これは、涙?



悲しい?......いや、悲しくない。

辛い?......辛いわけがない。



じゃあ、どうして、どうして、どうして。

泣いているの。



悲しいなんて知らない。

知らないふりをする。


そう決めたのに、涙など忘れかけていたのに、何年ぶりかにこうして溢れてしまった。



愚かだ、途轍もなく。

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