気づけば、吸血王子の腕の中【上】

上げたままで血の巡りが悪くなった腕を回しながら、ナターリアはため息をつく。


採寸は終わり、いつの間にか日は沈み、夕食も摂り、部屋に返された。



というより閉じ込められた。

城内でも、まだ危険だそうだ。



好きに使って良いと許可を得た椅子を大きな窓まで運び、腰を下ろす。

ダレル様に合わせて作られたであろう深い海の色をした絹を張った椅子に座ると、ナターリアの足は床につかない。


足をぶらぶらと持て余しながら、思い出す。



五つくらいの時は、こうして一人でいるとハンナやベスがやってきたものだった。


ここよりもずっと明るく暖かい外の景色ではあったものの、今にも「王女様、ご本を読みますか?」と扉を開けて入って来そうだった。

甲斐甲斐しく世話を焼き、いつもそばにいてくれた。


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