気づけば、吸血王子の腕の中【上】
懐かしいあの童話が読みたいから、まずは文学のところ。
あ、お花の図鑑も見よう、うーん、あるとしたら「自然」の棚かしら。
これは多分 “楽しい” な気持ち。
そこまで順調だったナターリアは、急に不安になった。
無意識に手が髪を探す。
こんなに読んでも、いいのか、バチは当たらないか。
これだけ自由にさせて、その対価あるいは罰として、またどこかへ飛ばされてしまうのではないか。
ぐるぐると防衛本能が思考を支配し始める。
ナターリアはふるふると首を振る。
こんなに楽しい、ずっと眠っていたやりたかったことが見つかった。
止めて罰を免れるのは、何となく......気が進まない。
─────“嫌だ”