気づけば、吸血王子の腕の中【上】
そうだ、これは “嫌” なことだ。
何を取られても、ある程度なら耐えてみせる。
それ以上に、譲れない、みたい、よみたい、知りたい......
ナターリアの心情に名前をつけるとしたら──いや、そうしなくても──、これは紛れもない “嫌” だった。
良い気持ちではないけれど、ちゃんと思ったこと、今日の日記に書こう。
そう決めつつ、ランプを手に提げ、快調とは言えない重い体を持ち上げ、階段へと歩き出した。
その一瞬も、ナターリアの身体はひっそりとそして確実に蝕まれていくのだった。