ぶっきらぼうなロマンチスト
「え、重た…!くそじじい」

「俺はお客さんを接客中なんだ。わかるよな」

「…っ」

彼は苛立ったように舌打ちをして、ずんずんと棚にある方に向かって鉢植えをしまっていく。そんなことも気にせずに「今日は少し珍しい花も多い」とも言っていた。
二人のやり取りの様子にひやひやしながらもどこか羨望の目を向けていた。自分の父とはどうだろう。こんな気軽に喧嘩などできないし、仕方ないといいながら自分を切り捨てるだろうと想像できた。

「お母さんの体調はどうだい?退院できそうかい?」

「あー-ちょっと季節の変わり目だから体調を崩していて。でもだいぶ良くはなっているって見てて思うんですけど」

これは嘘だ。もう今年の冬を越せるかわからなくなっていた。譫言の様にお父さんの名前を呼ぶお母さんはもうそろそろモルヒネの投薬を行うことになっていた。痛み止めである。もう私のことを思い出して呼んでくれるかわからない。口からするすると何度嘘をついてきただろう。いつも心配してくれる友人にも打ち明けたことはない。
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