月下の逢瀬
「決まってる、って。おかしな言い方するね。ただの高校生同士の付き合いだろ」


「……そう、ですね」


「…………」


曖昧に相づちをうつと、先生が何か言いたげに口を開いて、閉じた。

あたしは窓の景色を眺めるフリをしながら、視線を外に向けた。

先生は、訝しく思ったかもしれない。
けれど、これ以上言えることはないし。


どの位沈黙があった頃だったろう。
先生が一つため息をついた。


「いきなりこんな話を振った俺が悪かった。
せっかくの休みだし、天気もいいし、椎名には楽しんでもらいたいんだ。
ほら、もうすぐ水族館が見える。寄らないか? イルカのショーが有名らしいんだけど」


指差した先には、鮮やかな色合いの看板があった。


「この間、動物園で随分喜んでたろう? どうかな」


先生の声音は、あたしを気遣っているのがよく分かった。
楽しんでもらいたい、という言葉は、先生の本音のようで、あたしは小さく頷いた。


「……はい。じゃあ、行きたい、です」


「ん」


よかった、と先生は言って、車は水族館の方へと向かって行った。


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