月下の逢瀬
先生に示されるままにベンチに座る。

街並みの向こうに広がる海、遠くにはさっきまでいた水族館の建物が見えた。


「本当にいい景色ですね」


「結構、穴場だよな。こんなところ、墓参りにでも来ないと気付かない。

ごめん。ちょっと一本だけ」


ベンチの先にある手すりまで行って、先生はタバコに火をつけた。
煙がふわりと漂って、すぐに消えてゆく。


「あの……、何であたしを連れて来たんですか?」


さっきからずっと疑問だったことを、聞いた。

好きだった人のお墓。
そんな大事なところに、何であたしなんかを連れて来たんだろう。


「あー……うん。一人で来るのが嫌、だったのかな」



困ったように、頬を小さく掻きながら続けた。


「あと、誰かに見ててもらわないと、引きずったままになりそうだったんだ」


煙の消えてゆく先を眺める先生の視線を追うようにして、青空を見上げる。


「……佐和、さんって言うんですか?」


聞いていいのか分からず、躊躇いながらその名前を口にした。


「うん」


あたしに顔を向けた先生が、微かに頷いた。


「どんな、人だったんですか?」


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