月下の逢瀬
しばらくそうした後、おもむろに先生が立ち上がった。
振り返ってあたしを見た顔は、ぎこちない笑みを浮かべていた。
「いきなり、こんなトコ連れて来られても困るよな。悪い」
「……いえ」
「一緒に来てくれて、ありがとな」
大きく伸びをして、深く息を吐く。
「ここにいるのはさ、俺がずっと好きだった人なんだ」
少し緊張した声は、わざと明るいフリをしているように聞こえた。
「で、兄貴の恋人、愛人だった人でもある」
「…………え?」
どういう意味なのか理解できずに、顔を見た。
「向こう、行こうか。展望台になっててさ、ベンチもあるし」
すたすたと歩きだした先生についていく。
お兄さんの恋人で、愛人。
先生はその人が好きだったの?
墓地の先は木々が茂っていて、そこを抜けると、街並みを見下ろせる開けた場所に出た。
ペンキの剥げた古いベンチが二つだけ並んでいるだけ。
けれど、気持ちよい風が、短く刈られた草を撫でていく、静かで落ち着く場所だった。
「なかなか綺麗だろ? ほら、海も見えるし」
振り返ってあたしを見た顔は、ぎこちない笑みを浮かべていた。
「いきなり、こんなトコ連れて来られても困るよな。悪い」
「……いえ」
「一緒に来てくれて、ありがとな」
大きく伸びをして、深く息を吐く。
「ここにいるのはさ、俺がずっと好きだった人なんだ」
少し緊張した声は、わざと明るいフリをしているように聞こえた。
「で、兄貴の恋人、愛人だった人でもある」
「…………え?」
どういう意味なのか理解できずに、顔を見た。
「向こう、行こうか。展望台になっててさ、ベンチもあるし」
すたすたと歩きだした先生についていく。
お兄さんの恋人で、愛人。
先生はその人が好きだったの?
墓地の先は木々が茂っていて、そこを抜けると、街並みを見下ろせる開けた場所に出た。
ペンキの剥げた古いベンチが二つだけ並んでいるだけ。
けれど、気持ちよい風が、短く刈られた草を撫でていく、静かで落ち着く場所だった。
「なかなか綺麗だろ? ほら、海も見えるし」