月下の逢瀬
佐和のメールで、佐和の死を実感した。

母の泣き声も、父の震えた声も、どうにも信じられなかった。
さっきまで抱いていたのに?
俺の体がその温もりを覚えているのに、本当だと思えなかった。

けれど。
これが事実なのだと知って。

それは、俺にとって、ただの恐怖でしかなかった。

佐和がいない。
もうどこにもいない。

怖い。怖い。怖い。

湧き上がる恐怖は、悲鳴のような叫びとなって、口から溢れた。





それからのことは、よく覚えていない。



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