月下の逢瀬
『嫌じゃない』


理玖がはっきりと言い、
あたしを見る顔から、笑みが消えた。


『真緒を放っておいたら、同じ事を繰り返すだろ?
他の男に、真緒を抱かせたくない』


胸の奥が、じんと痺れた。


『二番目だけど、真緒はこれからは俺のもんだから。だから、他の男のとこには行くな』


『うん』


行くはずがない。
だって、あたしは理玖がいいんだから。
理玖さえいてくれるのなら、忘れなくていいのなら、他の男なんていらない。


『真緒。こっちに来て』


理玖が手招きした。
その手の動きに引き寄せられるように、あたしはふらふらと理玖の前に立った。


あたしを見上げる理玖の顔は、変わらず真剣だった。


『俺のこと、好き?』


『……好き。ずっと前から』


これが夢なら、覚める前に気持ちを伝えなくちゃ。
そう思うと照れや恥じらいの気持ちなんて湧いてこなかった。


夢?
これは夢じゃないよね?



あたしはここまで来て、まだこの状況についていけてなかった。



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