月下の逢瀬
頭のどこかで、これが嘘だったらとか、夢だったらとか、まだ考えている自分がいた。


この眼差しや、きつく結ばれた唇。
まばたきする間に、消えたりしない?




理玖が好きだと自覚したのは、中学に入学した辺りだった。
幼い頃、並んで眠った幼なじみは、女の子にモテるかっこいい男の子に成長していた。
対してあたしは、地味で口下手で、引っ込み思案な性格で、
女の子に囲まれる理玖を、遠巻きに見ていることしかできなかった。

二人の距離は自然と離れて、どんどん疎遠になっていった。

理玖が自分の彼女という地位を、他の明るい綺麗な女の子に与えた時には、挨拶すらしなくなっていて。

あたしは並んで歩く二人の背中を黙って見つめた。


それでも、好きという気持ちは捨てられない。


自分の気持ちを知って、4年。
望みのない、4年だった。

その4年という歳月が、あたしを素直に信じさせてくれない。


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