月下の逢瀬
理玖を見つめていると、腕を掴まれた。
そのままベッドに引き倒される。

ギシ……、と微かな音と共に、理玖の顔があたしを見下ろした。
体に理玖の重みを感じ、ふわりと理玖の香りがした。


『……真緒。夜の時間ってこういう事だけど、分かってる?』


あたしの両腕をベッドにとめた理玖が言った。


『分かってる。……理玖』


『何?』


『上書き……』


ん? と理玖が眉を寄せた。


『二回、あの人とした。だから……』


だから、二回して。
早くあたしの体を上書きして。


そう言おうとして、理玖に口を塞がれた。
押し入る舌、荒々しいキス。


『……真、緒……』


目を閉じると、理玖の声。
理玖の香り、重み。理玖の手。


夢じゃない。
これは夢なんかじゃない。

今この瞬間、理玖はあたしを見てくれている。


『り、く。理玖……』


抱きしめたらそこに理玖がいる。
これは現実だ。

あたしは溺れるように、その激しくあたしを抱く体に腕を絡ませた。



理玖は、何度となくあたしの体に口づけと、そのしるしを残し、あたしに小さな泣き声を上げさせた。
打ちつけるような腰は、痛みの塊だった。



始まりは、この夜から。
丸い月が浮かぶ、満月の夜だった。


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