月下の逢瀬
「理玖に言おうって思えたの、先生のお陰。
これから先の勇気は、自分で出す」


にこ、と笑ったあたしに、先生は小さなため息をついた。


「わかった、それなら頑張れ。でも」


真っ直ぐにあたしを見つめる瞳。


「もし宮本がお前を拒絶するようなことになったら、相談して欲しい。

椎名を一人で泣かせたくない」


「だから、そうやって甘やかしたらダメなんだってば」


言いながら、涙が滲んだ。


「大丈夫。理玖はきっと一緒に考えてくれると思う。
理玖は冷たい人じゃないから」


あたしは深く頭を下げた。


「じゃあ、もう行く。このままだとまた泣いちゃいそうだから。

さよなら」


「……ん。頑張れ」


「ありがと、じゃあ」


先生に見送られて、車を後にした。
もう頼ることのできない人が、ずっと背中を見送ってくれているのを感じながら。

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