月下の逢瀬
あたしはこの時間が一番好きだ。
安らかな、何もかもを忘れられる時間。

ずっと続けばいいと願う時間。


見上げれば、穏やかにあたしを見つめる瞳。
視線が合うと、形のいい唇が微かに笑む。
それに触れようと手を伸ばせば、悪戯にぺろりと舐められて、
忍びやかにくすくすと笑う。

この時間が永遠なら。


「疲れただろ。もう、寝な?」


寝たくない。
この時を一秒でも長く。

けれど。


「ん、わかった」


理玖の言葉通りに眠ろうと、目をぎゅっと閉じる。
理玖の鼓動を聞き、髪に絡む理玖の指先を感じながら、眠る。

疲れた体は、いつも気持ちとは裏腹に、あっさりと眠りについてしまう。



今日も、気付けば意識を失っていた。



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