月下の逢瀬
「へえ、すごーい。何だか、意外」


瞳を逸らして、ぶっきらぼうに言い放つ。
自分の想像外のことを言われたのが、あからさまに不満げだった。

と、思い付いたようにあたしを見て。


「それって、彼氏の理玖さんが素敵だからじゃないですか? 理玖さん、目立つ容姿だし。ね?」


自分を納得させるように頷いた。


「理玖さん、かっこいいですもんね。姉にはもったいない人だもん。

でもね……、姉と理玖さんが付き合ってるのには理由があるんですよ」


そっと声をひそめて言った顔は、意地悪な笑みを浮かべていた。


「姉はね、理玖さんを脅して付き合ってるんです」


楽しげな声音に身震いがした。
この子は、初対面のあたしになんて秘密を暴露しようとしてるの?


「姉の背中、見たことあります? 縫い跡だらけなの。
姉は自分の失敗で怪我したって言ってたけど、理玖さんの過ちが原因みたいなんですよね。

それを理由に、ね」


言い終えて、あたしの反応を探るように、黒い瞳が動く。
何も言えないあたしを見て、満足そうにコーヒーを口にした。


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