月下の逢瀬
理玖も、同じ気持ちなの?

横に感じる気配は、身じろぎもしない。


理玖は今、どんな顔をしているのかな?
気になるのに、怖くて顔を向けられない。


と、沈黙を理玖が破った。


「玲奈は、そろそろ意識が戻るだろう、って言われた」


返事の変わりに頷いた。


「その前に、真緒に話しておきたいことがあったんだ」


「え?」


「俺と、玲奈の間の話。あの時、話せなかったこと」


反射的に見上げると、理玖の茶色がかった瞳があった。
そこには迷いと決意が交互に現れてるような気がした。


聞きたくない。
知らないままでいたい。
二人が隠している、ちらりちらりと姿を現す秘密。

きっと玲奈さんの傷以上の、何か。


嫌だ。


だけど、知らなくちゃいけないんだ。


「聞いてくれるか?」


ぱしゃん。
小さな水音がした。


あたしはゆっくり、頷いた。


< 272 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop