月下の逢瀬
目の前で、玲奈が眠っている。
管に繋がれた体、痣や傷が無惨に残る顔。


俺はそれをずっと見つめていた。


これは俺の罪の現れだ。
身勝手に、己の感情のままに行動した、俺の。


ため息をついて、椅子の背にもたれた。
酷く、体が重い。

ここ数日、まともに眠ってないせいなのかもしれない。




『あたしは二番目だもん』


そう言った、真緒の顔が浮かぶ。
涙を堪えて、辛そうに歪んでいた。


『理玖の口から自分の罪を聞きたくない』


違う。
真緒のせいなんかじゃない。
俺が全部悪いんだ。

そう言おうとしたのに。
掴んだ真緒の肩は震えていて。
振り返った顔は涙をぼろぼろ零していた。

俺は何回真緒を傷つけたんだろう。
あの時、図書室で泣いている真緒を、慰めたかったのに。
涙を止めてあげたかったのに。
結局、俺が誰よりも真緒を泣かせてしまっている。


俺の来るのを待つしかない真緒が、ひっそりと泣いていたのは知っていた。
俺を迎える瞳の端に、涙の名残を見つけたことは幾度とある。


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