月下の逢瀬
「じゃあ、カーテン閉めたら、電気消してその服脱いで」


理玖は胸元に収まったあたしを見下ろして言う。
ふてぶてしい、支配するような言い方。


いつもそう。
急にやって来て、急にあたしを抱く。


でも、あたしはそれに逆らえない。


「……わかった。ベッドに、行ってて」


理玖の腕から逃れ、窓を閉めた。
カギをかけたところで、ふつりと電気が消える。


「俺が消してあげた。真緒」


ベッドから、理玖の声。甘くて、あたしの心をからめとる声。


唇をきゅっと噛むと、静かにカーテンをぴっちりと閉じた。
月明かりさえ入らないように。


真っ暗になった部屋。
あたしはゆっくりとベッドにいる理玖に体を向けた。

見えてない。
こんなに暗いんだもん。きっと見えてない。


そう、自分に言い聞かせながら、服を一枚ずつ脱いだ。

季節は秋。夜ともなると、気温は随分下がる。
その冷たい空気が、露わになった肌を包んだ。

裸の寒さに、はあ……、と吐息を洩らすと、暗がりから理玖の声。


「全部脱いだ? そしたら、おいで」


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