月下の逢瀬
翌日。

あたしはベッドに横たわったまま、一枚の写真をみていた。


それは、昨日診察してくれた女医さんがくれた、あたしのお腹のエコー写真だ。


そこに写る、小さな小さなあたしの赤ちゃん。
その姿をそっと指でなぞってみた。



「椎名、具合はどうだ?」


ドアの開く音がして、片桐先生が入ってきた。
少し疲れたような顔。
首元をゆるめたワイシャツは、昨日と同じ。


「大丈夫。お腹も、もう痛くないよ」


「そっか、よかった」


にこ、と笑ってみせると、先生は安心したようにベッド脇の椅子に深く座った。
ふう、とため息を一つ。


「疲れたよね、ごめんね。ありがとう」


あれから、先生はずっと、泣きじゃくるあたしのそばについていてくれた。
あたしが泣きながら、眠りに落ちるまで。
そして、朝目覚めた時には、あたしの手を握ってベッドに俯せるようにして眠ってくれていた。


疲れていて、当然だよね。
申し訳なくて、瞳を伏せた。


「気にするな」


手を伸ばして、あたしの頭を柔らかく撫でた。

と、あたしの手にしていた写真に気付いた。


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