月下の逢瀬

あれから数日後の日曜日。
あたしは一人で買い物に出かけていた。

結衣を誘ったけど、彼氏と先約があると断られてしまったのだ。

彼氏とお出かけ、か。
羨ましくないと言えば、嘘。

でも、そんなことまで望めない。


一人街中を歩きながら、無意識に首もとに手をやる。

理玖につけられた痕は、随分薄くなっていた。
あれから理玖は来ていない。


元々、週に二度くらいしか来なかったから、そんなに気にする程ではないけど。

でも、不安になる。
元々、不確かな関係なのだ。

あたしは何度となく、「好きだ」と言ってきた。
理玖の腕の中で、繰り返し。

けれど、理玖は一度も、自分の気持ちを口にしない。
ただ、あたしを抱くだけ。

理玖は何で、あたしとこんな関係を始めたんだろう。

幼なじみに対する情、そんなものから?
それとも、バカなことをした女を哀れんだ、それだけ?

ううん。もしかしたら、ただのヤれる女と思っている、のかも……。


理玖は、あたしのことを少しは想ってくれてるの?

わからない。
でも、そんな関係だから、理玖があたしに飽きてしまえば、そこで終わってしまう。

理玖がいつ飽きるかなんて、理玖次第で、尚更わからない。


< 34 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop