月下の逢瀬
あたしには、理玖をただ待つことしかできない。


溜め息が知らず知らずこぼれる。


自分で覚悟したはずのことなのに、やっぱり寂しさを感じる。

一度でいい。
理玖にあたしが必要だと言われたら、あたしはずっと理玖を想っていけるのに。




「……あ! あーあ。バカみたい」


気がつくと、目的のお店をとっくに通り過ぎていた。
戻ろうとして、止める。

こんなにへこんだ気持ちじゃ、服を選んでも楽しくない。


「もういいや。本だけ買って帰ろう」


ちょうど立っていた場所は本屋の前だった。
欲しかった小説を探すために、そのまま中へと入った。


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