月下の逢瀬
目の前の鏡に映る自分を見つめた。

頼りなげな、弱々しい表情。
ちょっとつつけば、涙が溢れるだろう。

さっきの玲奈さんは、溌剌として可愛くて。
何事にも動じないような逞しさがあった。


羨ましいという気持ちは、醜い。
妬みとなんら変わらない。
何にも動かずにいたあたしが、玲奈さんをただ羨むのは、愚かなのだ。
甘いと言われたり渡辺さんたちと同じ。


みっともない。


鏡の自分にぎこちなく笑ってみせて、トイレから出た。
休憩時間の穏やかな雰囲気の教室に入ると、理玖と顔を突き合わせて雑誌を見ていた玲奈さんと目が合った。

小さく手を振られて、曖昧に笑みを返す。
と、玲奈さんの視線を追った理玖と目が合った。

心臓が跳ね上がる。

理玖は頷くような会釈をして、あたしに再び背中を向けた。


あっさりとした仕草に、胸がきりりと痛んだ。
もう、幼なじみのお兄ちゃんではないんだから、当たり前の態度なのだろうけど。

小さな溜め息をついて、席に戻る。

その時に、思った。


理玖には玲奈さんへの気持ちはあるのだろうか?


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