【番外編】副社長の一目惚れフィアンセ ~詩織の物語~



ある日の昼休み、日付と名簿を掛け合わせて先生が適当に選んだんだろう。

私と彼が生徒に配るテキストを運ぶのを手伝わされることになった。

職員室から教室までの道のり、彼は何も話さない。

話題なんて特にないけれど、黙って歩くのもなんだし、少しくらい会話をしようと声をかけた。


「ねえ、吉井くんって勉強得意なの?」

「え、あー…」

「この前、数Aで小テストの成績褒められてたじゃない」

「うん…そうだな」


彼が私の話を聞いておらず、適当に返事をしただけなのは明らかだった。

思わずムッとして余計な言葉が口を突いて出る。


「吉井くん、かっこいいからって素っ気ないの感じ悪いよ?」


鋭い口調になった私に、彼が驚いたようにこちらを見たけど、私はツンと顔を背けて足早に歩き去った。

教卓にテキストの束を乗せ、涼香の席の前の椅子にドンッと座る。


「どうしたの?詩織。なんか機嫌悪い?」

「吉井くんってなんなの?
もっとクラスメイトと友好的になれないわけ?」

「は?全然話が読めないんだけど」

「素っ気なくて感じ悪いよって言っちゃった。
だって実際感じ悪かったし」

「えっ詩織!それ違うよ!」


涼香は小声ながらも慌てた様子で手を横に振った。


「吉井くん、陸上部で7時まで部活あって、そのあと夜遅くまでバイトしてるらしいよ」

「バイト?」

「母子家庭で生活が厳しいとかで…
奨学金申請してるみたいだけど、それがおりるまでバイトで繋いでるんだって。
だから多分日中眠くて仕方ないんだと思う」

「…マジか」


ガクッと頭を垂れた。





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