転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします


この部屋に住み始めたばかりの時も、よくこうしてひとりで夜景を見ていた。それを苦痛に感じたことなんてなかった。

それなのに今日はなぜか、いつもキラキラしている景色が霞んで見えた。


ひとりが寂しいなんて思ったのは、いつぶりだろう。


ひとりでいるのには慣れていた。昔から一匹狼と言われ続けていたし、なんならひとりが好きだった。

それなのに逸生さんと出会って、そしてあのオフィスのメンバーと仲良くなって、私の生活はガラッと変わってしまった。

慣れって怖いな。あと半年もすれば、全てなくなるのに。


「…寝よ」


理由も分からずモヤモヤしてしまう自分が嫌で、気を紛らわすようにソファから勢いよく立ち上がった。

連絡を気にするのも嫌だったためスマホの電源を切り、寝室に向かおうとした


───その時だった。


玄関の方で物音がして、その直後、廊下に電気がついたのが見えて、思わず足を止めた。



「──紗良、ただいま」


リビングのドアを開けた逸生さんが、私を視界に入れたと同時に目を細める。

その笑顔を見た瞬間、何かがぶわっと込み上げてきたけれど、何とか平静を装いながら「おかえりなさい」と小さく紡いだ。

< 137 / 324 >

この作品をシェア

pagetop