転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
この部屋に住み始めたばかりの時も、よくこうしてひとりで夜景を見ていた。それを苦痛に感じたことなんてなかった。
それなのに今日はなぜか、いつもキラキラしている景色が霞んで見えた。
ひとりが寂しいなんて思ったのは、いつぶりだろう。
ひとりでいるのには慣れていた。昔から一匹狼と言われ続けていたし、なんならひとりが好きだった。
それなのに逸生さんと出会って、そしてあのオフィスのメンバーと仲良くなって、私の生活はガラッと変わってしまった。
慣れって怖いな。あと半年もすれば、全てなくなるのに。
「…寝よ」
理由も分からずモヤモヤしてしまう自分が嫌で、気を紛らわすようにソファから勢いよく立ち上がった。
連絡を気にするのも嫌だったためスマホの電源を切り、寝室に向かおうとした
───その時だった。
玄関の方で物音がして、その直後、廊下に電気がついたのが見えて、思わず足を止めた。
「──紗良、ただいま」
リビングのドアを開けた逸生さんが、私を視界に入れたと同時に目を細める。
その笑顔を見た瞬間、何かがぶわっと込み上げてきたけれど、何とか平静を装いながら「おかえりなさい」と小さく紡いだ。