転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします

「では、“帰れないかも”と仰っていたのは…?」

「あー、なんか親父が勝手に部屋を押さえてたんだけど、それも兄貴が偵察のために泊まるって」


まぁそれは助かったけど。そう言って肘をついて私に視線を向ける逸生さんは「お陰で紗良と一緒に寝られるし」と穏やかに紡ぐ。

その言葉に、なぜかきゅうっと胸が締め付けられ、思わずニヤけそうになった私は、誤魔化すようにベッドに倒れ込んだ。


そっか。ふたりきりじゃなかったんだ。てことは、松陰寺さんはプレゼントも渡せなかったのかな。

どうしよう。私、めちゃくちゃ安心してる。

ふたりきりじゃなかったことも、逸生さんが真っ直ぐここへ帰ってきてくれたことも。

そしてこうして、一緒に寝られるのも、全部が嬉しい。


「…逸生さん、もう少し近付いていいですか」


逸生さんの返事を聞く前にもぞもぞと移動を始めた私は、身体が触れ合いそうなくらい距離を縮めた。

キングサイズのベッドはいつも広々使っていて、今までくっついて眠ったことなんて一度もなかったけれど、今日はすぐそばに逸生さんのぬくもりを感じたかった。


「…今日も、してくれます?」

「……」


控えめに尋ねた私に、逸生さんは一瞬驚いた顔を見せたけれど、すぐに影を落とすと、そのままゆっくりと唇を重ねた。

その熱から、じわじわと心が満たされていくのを感じた。


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