転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
ちなみに今日は、ふたりの時間を楽しむために電車で行動している。就業時間中だから一応オフィスコーデだけど、電車での行動は何だか新鮮で、一般的なデートをしている気分だった。
ただ、容姿端麗な逸生さんは街を歩くと人の目を引くため、いつ取引先の人に会うかもわからない。
そのため、花火大会の時のように手は繋げないけれど、それでも十分デート気分を味わえた。
「──紗良っ」
ぼんやりとそんなことを考えていた矢先、突如逸生さんに腕を強く引かれハッと我に返った。
その直後、私のすぐそばを車が結構なスピードで通り過ぎて、そこでやっと私が車にぶつかりそうだったことに気付いた。
「紗良、大丈夫か?」
「…はい、大丈夫です。すみません、ぼーっとしてました」
そう謝罪しながら慌てて視線を手元に落とし、逸生さんから貰ったプレゼントが無事なのを確認した私は、ほっと胸を撫で下ろした。
「紗良が今度こそ転生するかと思って焦った」
そう言っていたずらっぽく笑う彼の手は、まだ私の腕を掴んだまま。その熱に、みるみる私の体温が上昇していく。
守ってもらったことに、きゅんとしてしまった。またひとつ彼を好きになった。
「いま転生するのは勘弁してほしいですね」
「…最近は転生したいって思わなくなった?」
「あれ以来1度も思ってないですよ」
「そうか、安心した」
──こんなに幸せなのに、このタイミングで転生なんてするわけないよ。