転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
16.ひとつに


あの後、平常心を保てる自信がなかった私は、暫くの間ひとりでトイレに籠っていた。

そこで今までのことやこれからのこと、色々なことを考え、整理して。
なんとか気持ちが落ち着き、オフィスに戻れば、そこには既に逸生さんの姿があった。

逸生さんの顔を見たら泣いてしまうんじゃないかと不安だったけれど、さすが私。感情を押し殺すのは得意だから、逸生さんに「急遽明日から出張になった」と告げられても、動揺することなく頷くことが出来た。

けれど、そんな私とは反対に逸生さんの方が落ち込んでいるように見えて「なるべく早く済ませて戻るから」と寂しげに瞳を揺らす彼に、胸をぎゅっと締め付けられた。


寂しいのは私の方なのに、そんな顔されたら余計に離れ難くなってしまう。

逸生さんは、やっぱり狡い男だ。

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