転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします


その後ダッシュでじいちゃん家に駆け込むと、息を切らしながら機嫌を悪くする俺を見て、じいちゃんは「喧嘩か?」と笑った。

喧嘩の方が、まだ良かった。俺はあの日から、あの女のことが頭から離れなくなった。

ちゃんと名前は聞けなかったけど、あのおっさんが“さら”と呼んでいた。だからきっと、あの女の名前はさらだ。さらが忘れられない。


「なぁじいちゃん」


あれから一週間以上経っても、ふとした時に“さら”が脳裏に浮かぶ。
今まで何人もの人と喧嘩をしてきたけど、こんなことは初めてだった。


「ある奴のことが頭から離れないんだけど、これ病気?」


耐えきれずじいちゃんに聞いた。ひとりじゃ処理しきれなくなったから。
だからと言って病院に行くわけにもいかないし、でも他に相談出来る相手もいなくて、仕方なく一番信用しているじいちゃんに聞いた。


「逸生…それは、恋じゃないか!?」

「…は?」

「こないだ漫喫でたまたま読んだ少女漫画に、その人のことしか考えられなくなるのは恋だって書いてたぞ」


ドヤ顔で自信たっぷりにそう言うじいちゃんに、思わず怪訝な目を向けた。


「じいちゃん、その年で漫喫行ってんの?」

「こないだこっそりデビューしてみた。皆には内緒な」

「その初めての漫喫で、少女漫画読んだわけ?」

「うん。ドキドキ☆シンデレララブマリンってやつ。人気って聞いたから読んでみた。なかなか面白かったけど、老眼には字が小さいな」

「…なにその変なタイトル。そんなんアテになんねーよ」


聞いた相手を間違えた。

だって、あの一瞬でこの俺が恋におちるわけ……。


────え、まさかこれが恋?


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