転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「でも岬さんは逸のこと恩人って言ってたぞ。ニートの私を拾ってくれたって。初恋どうこうの前に、お前も岬さんを助けたいっていう気持ちが、少なからずあったんじゃねえの?」
「ううん。無条件で一日中そばに置いておくにはそれしなかいと思った」
「やば。それじゃただの束縛男じゃねーか」
秘書なんて別にいらなかった。しかも女の秘書なら尚更。小山だけでも、十分仕事は回ってたわけだし。
それなのに紗良を秘書にしたのは、この1年間、出来る限りそばにいたかったから。
でも、この選択が果たして正解だったのかは分からない。だって、常に紗良が気になって仕事どころじゃなくなってるし。
それに他の社員が紗良を見る度イライラするし心配になる。もしかしたら他の社員といい感じになって、1年後、俺らが別れた後、紗良はそいつと付き合うんじゃないかと思ったら……え、本当に無理なんだけど。
「…もう俺ダメかも」
「ポジティブだけが取り柄の逸が、珍しく落ち込んでる。おもろ」
「おもんねーよ。マジで紗良を前にしたら自分が自分じゃいられなくなりそうで怖い。今は余裕がある男を装ってるけど、紗良と目が合うと吸い込まれそうになって頭が真っ白になって余計なこと口走りそうになる」
「余計なことって?」
「好きとか」
「別に言えばいいじゃん。一応付き合ってんだから」
「言って引かれたらどうする?!それでもし逃げられたら立ち直れなくなるぞ?!」
───はぁ、想像しただけで胸が痛い。