転生(未遂)秘書は恋人も兼任いたします
「紗良、ドライブデート楽しい?」
行きの車内とは違い、緊張がとけたためか、空気が少し和らいだ気がする。逸生さんの仕事モードもオフになったのか「分かってる?これ一応デートだからな」と冗談っぽく笑う。
「正直、よく分かりません」
「おい正直過ぎんだろ」
「いや、実は私ドライブデートが初めてで。ていうか、そもそもデート自体が初めてなんですけど」
「えっ、嘘だろ」
「本当ですよ。だから比べるものがないので、よく分からないんですけど…」
この歳でデート未経験はさすがにヤバかったかな。逸生さんはドン引きしているのか、ぽかんと口を開けたまま運転している。
「すみません。引きましたよね」
「いや、全然。むしろ人生初のデートがこんなので良かったのかなって心配してる。もっとデートらしいことすればよかったな。ごめん」
「え、そんなこと気にしないでください。こうしてのんびりと景色を眺めながら話をするの、悪くないですよ。何だか落ち着くし」
「落ち着く?」
「はい。てことは、私いま楽しめてますね」
表情に出ないから伝わりづらいかもしれないけれど、私はいま、初デートを十分に楽しめていると思う。
逸生さんと会話をするのは不思議と苦じゃないし、まだ彼のことをよく知らないから、こういう時間は大切だと思うし。
「デートが初めてってことはさ…」
「はい」
「…その、キスとかも、まだ?」
「あ、それはあります。…って、わっ!逸生さん危ない!ぶつかる!」
「あ、ごめん。いま一瞬鈍器か何かで殴られたような感覚が」
「大丈夫ですか?お疲れなら運転代わりますよ?」
「いや、もう大丈夫」
びっくりした。急に逸生さんがガードレールに向かってハンドルをきるから、危うく事故を起こすところだった。